建築・都市分野のVR・MR技術の展望

TODO ARに注目しよう

City Scope

都市計画でのAR技術の応用例として、MIT Media LabのCity Scienceグループが開発して いるCity Scopeという集団的合意形成プラットフォームがある。

このシステムの開発者の視点から、都市計画におけるMR技術の展望を考える。

itにbitを併記するときにインターフェース

まず Augumented Reality というときに、ここでモノ(it)にコト(bit)を併記するための インターフェースとする。この上で、CityScopeプラットフォームの前提として、はじめ に多参加におけるARを可能にするデヴァイスのメディア的性質を考えたい。

産業界ではヘッドマウントディスプレイとスマートフォン上で行うAR技術に投資が集中し ているのは明らかである。両者は共通してパーソナル・メディアであり特性はとしてユー ザーの状態(ステート)が重要視されやすい。

Pokemon Goを例に見てみよう、ポケモンの捕獲時は必ずデバイス使用者と正対しているこ とからも、他のユーザーは関係ない。レイドバトルと言われている多数のプレイヤーで一 体のポケモンを退治する際も、他のプレイヤーは背景にうつり参加が確認できるがいつも 対象のポケモンは自分のポケモンと対峙している。One to oneであり、自分が見ているも のと他のユーザーが見ている現実に辻褄が合わないので多元宇宙である。トレードやユー ザーといった、他の参加者とのインタラクションもあるが、基本的には常に自分を中心に 世界が回っているイメージだ。

一方で、プロジェクションマッピングによるAR、ディスプレイを介さずそのままモノに情 報を併記する方法は多参加プロセスに向いている。トレードオフとして、その場に居合わ せないといけないという点とプロジェクションが同じだからといってそれぞれの解釈が食 い違うことがあるということだろう。前者は物理的制約だが、後者は他のメディアでも言 える。

都市計画への応用

このようなメディアを都市計画に利用しようとするとき、提案や計画プランに対して集団 的に合意するためのプラットフォームが考えられる。

計画は最終的に一つの案に落とし込むという合議プロセスが必要であり、このプロセスに は審議コストが生じる。審議コストとは具体的には何に対して合議するかとその事象に正 確な情報が行き渡っているかという参加者同士の情報の対称性、それぞれの参加者が他の 参加者も同様にその情報を知っているという共有情報化、その上でお互いの立場から交渉 をし、一つの案に収束させるための議論のコストである。

そのメディアとして、物理的な紙の図面や、模型が担ってきた唯一性はここでも重要とな ってくる。別々のヘッドマウントディスプレイでどこまで同じ情報が共有されているかが 自明でなければ、合議や統合に使うメディアとして使いにくい。広義に多参加での情報の 正確性(integrity)はBlock chain技術でまさに注目を浴びている分野であり、ARを使って 都市計画のように全員が違う立場でどうしても情報の解釈の幅があるものを扱う場合、分 散帳簿技術が必要になるかもしれない。

ある政策に対して合議をする場合はブロードキャスト、すなわち同じ情報が多に配信され ている事実がメディア側に担保あるいは参加コミュニティの規範に組み込まれている必要 がある。テレビは番組表と電波法によって受信してる情報が同じであると僕らは信じて (社会規範化)いる。ARの展望としてこういったコンテンツサイドでの考察が今後深まっ てくるものと考える。

またインターフェースである以上、デバイスのスケールが重要である。スマートフォンと タブレットでは大きな差があり、公共性が変わる。公共を扱う以上、デバイスのメディア 性についてもパブリックとプライベート性が重要になってくる。

CityScopeの目的

以上の考えを試行するため、MIT Media Lab のCity ScienceグループではCityScopeとい うプラットフォームを開発している。このプラットフォームは大きく二つの目的をもって いる。1.都市計画の合議プロセスの民主化と2.それらの計画のラピッドプロトタイピング である。

先にのべた、審議コストがかかる都市計画の分野も情報化社会によって、市民の理解が分 散しますます合議が難しい時代となってきている。こうした中でまちづくりと都市計画の ブリッジ役としてこういったプラットフォームが整備されることによって、トップダウン とボトムアップの両方の計画を包含するシステムができると考える。

既存のトップダウン的な方法を取ったとしても、一つの計画に必要な勘案事項がますます 増え、決断も複雑化していく中、方向性を決めるのにコストがかかりすぎる。各都市計画 コンサル・シンクタンクから提出される報告書を統合し、得られた知見と市民からの 訴えを反映しつつ素早く色々なケースを検討できるプラットフォームが必要である。

CityScopeの仕組

ハードウェア

テーブルにレゴで作られた模型があり、いくつかのピースは動かせるようになっている。 そのピースには下にタグが付いており、それらの集合は下から見るとQRコードにように なり、どんなピースが乗っているか、カメラによって下から撮影することによって検知 する事ができる。この情報を元に、各種シミュレーションをまわし、上からプロジェク ションマッピングするというのが基本構成となっている。

大型タッチパネルでも可能だが、複数人が集まって議論できるほどの大型化と多点検出 (指-30本)は技術的に難しく、レゴブロックとカメラとプロジェクターで簡単に低コス トで作れるのは大きな利点である。可能なインタラクションが可動ピースを置くという 事に限定している事と誰しもが親しみやすいレゴを使っているので、大型タッチパネル よりも積極的に参加するというのがユーザー調査によってわかった。

ソフトウェア

以下の3つの群に分けることができる。

  1. レゴブロックタグを認識する画像処理モジュール
  2. (フロントエンド) プロジェクション・ビジュアライゼーション
  3. (バックエンド) シミュレーションとデータ保存とタスクスケジューリング

この中で得に開発として重要なのが、シミュレーション結果に対する応答時間となる。 議論プロセスの最中に計算結果を示さないといけないので、通信速度も含め、結果を約 1秒以内で返す必要がある。それには各種機械学習・深層学習のテクニックを使い、確度 をある程度調整しながらざっくりとした方向性を示す事がこのツールのラピッドプロトタ イピング利用時での要となっている。

CityScopeの利用例

最後にハンブルグ市で行ったCityScopeの例を2つ紹介して、都市計画におけるAR利用を まとめたい。

移民アロケーション

2015年に中東地域から合計8万人を超える難民がハンブルグ市に避難してきた。彼らのア ロケーション検討を市民参加で行った。 総論として人道的支援の検知から積極的に受け 入れるべきと賛同があるなか、各論としていざ自分の住居の近くは反対という計画の難 しさが議論の争点となった。それをCityScopeによって2万人の受け入れ候補地について 合議プロセス支援を行った。具体的には市内30地区のリーダーがそれぞれ住民代表を選 び、ワークショップを開きながら150の受け入れ候補地を3ヶ月で選定した。

pc: Ariel Noyman

再開発プロジェクトの設計競技案の比較検討

市内グラスブルグ地区の再開発の設計コンペにCityScopeをアセスメントツールとして使 うプロジェクト2019年現在進行形である。 建築家による提案を通常のCityScopeが行っている都市の指標化に加え、風・騒音・交通 アクセス等のシミュレーションを回しながら比較検討し、市民のインプットを集める予定 である。

参考文献

  1. http://www.daijirom.com/wp-content/uploads/sfc%5Fjournal%5F1709.pdf/
  2. https://medium.com/mit-media-lab/shifting-priorities-finding-places-9ad3bdbe38b8